Usaatoにかかわる、ひと・もの・こと vol.15 金原真紀子さん | Usaato うさと

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Number 251

Usaatoにかかわる、ひと・もの・こと vol.15 金原真紀子さん

 

京都南部、宇治ののどかな住宅街。

表からはまったく普通の住宅に見える一軒の裏手に、藍染工房「一期一藍」を営むのは金原真紀子さん。

乾燥させたタデアイの葉に水を打ち、100日間発酵させた蒅(すくも)を灰汁と合わせて、さらに発酵させた染液を使用する【天然灰汁発酵建て】による藍染めを行っている。

 

 

 

 

金原さんは北海道出身。

 

地域の活動がきっかけで、自宅の庭で徳島から取り寄せた蒅(すくも)を使用し藍染めをしていた母により、小さな頃から藍染めは身近な存在だったそう。

 

「とはいえ、それは母の趣味やし、私には関係がないと思っていたんですが、その母が亡くなり、染めたものを少しずつ、小物に作り変えたりしているうちに、”もっとこんな生地だったら良いのに”とか”もっとこんな模様やったら良いのに”と思うようになって、そこから自分で染めたいと思うようになりました。」

 

 

【染液に幾度か浸けた後、水に晒す工程。藍色が鮮やかになっていく。】

 

 

”天然のものだけを使って藍染めをしたい”

 

という思いがあった。

 

 

まずはネットで調べるところから始めたが、みなそれぞれやり方が違う。「これ」というものは見当たらない。母に聞くこともできない。

染めたい気持ちが先行し、インスタントに染めることのできる市販の藍染めキットなども使ってみた。

初めは楽しかったが、自分がやりたかったことから遠ざかっていると感じた。

廃液を流す時に「本当にこれは流しても良いものか」など、ひっかかりを感じて、出来なくなった。

 

 

一人の方に最初から最後まで教えてもらう環境に身を置かなくてはだめだ。

そう考え、探して辿りついたのが、江戸時代から藍染めが盛んに行われていた徳島の”師匠”と仰ぐ方だった。

 

藍染めをしている人はいても、門外の人間に教えてくれる人は当時少なかった。

師匠は伝統が廃れることを危惧し、開いた活動をされている方で、今でも徳島まで蒅(すくも)をいただきに足を運び、お話することを励みにしているそう。

 

 

 

【「乾燥していればいるほど、濃い藍が出る」という蒅】

 

 

まだ手のかかる子供のいる中、なんとか徳島に滞在して研修を受けた金原さん。

母の藍染めから考えると、ずいぶん大掛かりな、知らない世界に飛び込むことになったが ” 天然のものだけを使って藍染めをしたい ”という願いを叶えることは、日本の伝統的な藍染め【天然灰汁発酵藍建て】を学ぶことに直結していた。

 

染液を入れる大きな甕(かめ)や、灰汁をためおくタンクなど、必要なものは場所をとる。それらを置くスペース、それに資金が必要だったが、どちらも無い。

「私には無理」という思いもよぎったが、研修期間中に毎日藍に触れ、師匠の話を聞くうちに「やっぱり自分がやりたいのはこれだ」と思った。

 

「とにかく始めたい、まず一歩を踏み出したいと思って」

 

雨風凌げる場所が必要だと、自宅の庭にセルフビルドで小屋を建て始める。

 

「DIYは小さなものしか作ったことなかったけど、切って繋げていけば物ができると思って。小屋の建て方もGoogleで調べました 笑」

 

隙間時間で取り組み、5ヶ月で完成させた。

 

一つだった甕も、3年目の今は二つに。

「色々試してみたくて」という言葉の通り、依頼のあった衣類のアップサイクルとしての藍染めや髪染め(!)まで精力的に活動されている。

 

 

 

 

染液を発酵させる大谷焼きの甕は、徳島の窯で藍染め専用に焼かれたもので、染液を撹拌する際に遠心力でこぼれないよう、ふちに返しがある。

藍染めと二人三脚で発展した甕だという。

 

「天然の藍染めも、どんどんやる人が少なくなって廃れていく中で、この甕を使う人も少なくなり、甕作りの職人さんは、もう二人しかいなくて。最初はケチな気持ちもあって、ポリバケツでも出来る、と思ったんですが、ちゃんと藍のことを考えると”甕をセットじゃないとだめ”と思うようになりました。染液は発酵しているものなので、プラスチックで閉じ込めるより呼吸のできるものが良い、という部分にも納得したので。がんばって甕をお迎えしました。」

 

 

毎日甕を撹拌して、五感でその状態を感じ、発酵を見守る。

気持ちが伝わるような気がして、声をかける。

 

昨日と今日では染まり方が違う。

染める素材や織り具合によっても違う。

一度たりとも同じものはない。

 

「藍が引き寄せてくれるご縁も含めて、全部が一期一会なんです」

 

 

【工房には”藍”染明王が祀られていた。藍染めの歴史ある徳島県藍住町のお札だという】

 

 

今回、そのご縁をいただき、Usaatoの機械織りインナータンクトップを金原さんに藍染めしてもらいました。

 

機械織り生地の薄さ、軽さに海のような藍色は、ぜひ夏に着たい1枚。

 

 

 

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”一期一会”の色。

お楽しみください。

 

 

こちらの動画で、染めの様子をご覧いただけます。

Youtube

 

 

金原さんの藍染工房「一期一藍」

https://ichigoichiai.thebase.in

 

 

 

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