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Number 34
Usaatoにかかわる、ひと・もの・こと vol.5 今部文彦さん
今部文彦さんは
群馬県高崎市で
無農薬小麦専門の小さな製粉所を営んでいる。
簡素な室内に
年季の入った製粉機。
すぐに調整できるようにだろうか。
スパナなどの工具が無造作に置かれている。
「寒いので、どうぞ。」
そう言って湯気の立ち上る湯呑みを差し出してくれた。
ふくよかな香りが美味しいお茶だ。
友人の農家の柿の葉茶だと言う。
社会人になりたての頃。
仕事の忙しさもあり、コンビニやスーパーで出来合いのものばかり食べていた。
病気になったわけではない。
だが身体に力が入らず違和感を感じる毎日。
そんなある日、保存料入りの食べ物を食べたら蕁麻疹が出た。
「口に入るものと身体との関係の深さを、そこで初めて感じました。」
添加物を含む食べ物や農薬を使用した作物を
身体が受け付けなくなった。
その頃、友人が無農薬、自然栽培で米を作り始め、その手伝いを始めた。
週末にバイクで東京から群馬へ通った。
東日本大震災を経て
都会で生活することの脆弱さ
息苦しさを感じるのと比例するように
農家との関わりが増え、農を通じた知り合いも増えてゆく。
その頃にはそれまでとは逆に
群馬から東京へ通うようになっていた。
転職も考えながら、群馬に転地したものの
サラリーマンの安定感も捨てきれずにいた今部さん。
その頃、Usaatoのデザイナー、うーさんから手紙を受け取った。
「Usaatoの服は当時すでに気に入って着ていて。
うーさんとは、前橋のサンデールームさんの展示販売会でお会いしました。
その時に当時勤めていた会社の名刺をお渡ししたのかな?
転職を考えている、みたいなことも話したかもしれません。
そうしたら、後日会社にお手紙が届いたんです。
タイからエアメールで。
びっくりしました。」
拝見させてもらった。
おみくじみたいな言葉が書いてある手紙だ。
「年配の方が営む精米所から
「製粉機が1台余っている、仕事をやめるつもりなら使わないか」
という話をいただいたのもその頃で。
僕はもう一つ、福祉の仕事をしているんですが
そのきっかけをお声掛け頂いたタイミングでもあり
ああ、そうなんだ、と思いました。」
安定したサラリーマン生活にどっぷり浸かって
臆病になっていた自分だが
数々のきっかけが支えになり、踏み切れた。
「このお手紙、
色とかすごく綺麗で
お手紙自体が一つの絵みたいで。
普段は仕舞い込んで、正直なところ忘れちゃってたんですけどね。笑」
今部さんの製粉所は、
農と食の”間”を取り持っている。
どんなに心を込めて
手をかけ育った小麦でも
粒のままでは人は食べられない。
大手の製粉所では製粉を受け付けてもらえず
農協などの組合に卸すと、栽培方法の異なる小麦と混ざってしまう。
無農薬で小麦を作る農家には、そんな悩みがある。
今部さんの製粉所のあるあたりには、
昔はたくさん小さな製粉所があったが
高齢化に伴い数が少なくなった。
必要な仕事だし、他にやる人もいない。
「製粉を請け負うことで農業に携われるなら、
すごく良いんじゃないか。
そう思います。
サラリーマンをやっていた頃に比べたら
はるかに生きやすい。
過ごしやすい。
儲かるわけではないけど、暮らして行ける。
稼ぐ云々以前に、喜ばれる仕事ができて
やっていて良かったなと思えるんです。」
最後に、今後Usaatoに望むことを聞いてみた。
「作業しやすい服が欲しいです。
作業する時にもUsaatoを着たいんですが
狭いところに入って作業したりすると
どうしても引っかかったりするんです。
タフさが欲しい。
もしくは中に着れる、Tシャツとか。
中に着れているとほっとします。
仕事ベースに使えるものがあると嬉しいですね。」
大地のエネルギーそのままに育った農作物が
私たちの口に入り、いのちになるまで。
そのどこを担う人もが
自分を生ききれたときに生まれる調和がある。
今部さんのさりげない佇まいに
その兆しを感じた。
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