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Number 85
Usaatoにかかわる、ひと・もの・こと vol.14 長谷川良子さん
「ここの靴、すごく可愛いの。
私たちの会社の近くにこんな工房があるなんて、素敵じゃない?オンラインショップの撮影用にどうかな?」
Usaatoスタッフの一人から見せられた画面に並ぶのは、童話の挿絵に出て来そうなフォルムに、赤や黄緑・紫など楽しい配色の革靴たち。
Usaatoの服も、どこかお話の中にいるようなシルエットのものが多い。
「うちの服に合わせてみたい!」
そう思い、靴屋さん”GROWOLD(グロウオールド)”を訪れた。
北野天満宮の前にあるそこは、店舗と工房を兼ねており、童話に出て来そうなムードをところどころ滲ませながらも西陣の街並みに不思議と溶け込んでいる。
店内に並ぶ靴は全てサンプル。
店主の長谷川良子さんが、全てお一人で製作されているという。
「一足一足手間暇がかかっちゃう。
ビジネスが本当にできないんです。笑」
オーダー制で、現在は約8ヶ月待ちの人気だ。
長谷川さんが靴作りを始めたきっかけは、結婚を機に渡ったドイツで出会った、子供用の革靴。
ドイツでは、ファーストシューズに革靴を送る習慣があり、赤ちゃんが履かなくなった後は玄関に幸運のお守りとして飾るのだそう。
子供用の革靴も豊富で、息子に、といくつか買い求めた。
帰国後、いざ息子に履かせようとすると、足の型に合わない。
残念に思っていたところ、近所に靴工房が主催する靴作りの教室を見つけた。
それが、長谷川さんと靴作りとの出会いだ。
「ものづくりの楽しさを、そこで知りました。息子の靴を作り終えてからも、自分の靴も作りに、定期的に通っていました。」
【ベビーコーナー。下の段のものは、実際に息子さんが履かれていたもの】
その後、転機が訪れる。
離婚をきっかけに当時4歳の息子を育てながら、仕事もしなければならなくなった。
当時幼稚園に通っていた息子を保育園へ転園させ、フルタイムで仕事に出るのは抵抗があった。
「家で出来る仕事はないかなと考えました。
その時に「靴だったらできるかも」と漠然と思い立ったんです。
通っていた工房でタイミングよく”職人コース”の立ち上げがあり、そこから1年間、周りの人に協力してもらいながら通いました。
そうして、暮らしている四畳半のアパートをアトリエに改装したのが始まりです。
息子のそばに居て成長も見守れたので良かったと思っています。
初めの頃の売れ方は全然でしたけどね。笑
友達が応援で注文してくれて、子供服屋さんのアルバイトと二足のわらじでやっていました。
よくここまで続いているなと思うくらい、何も考えずに始めたんです。笑」
その後、青梅への移転を経てクチコミでお客様をじわじわと増やし、京都へ。
「飛躍したい。そう思って、都心への移転を考えていた時に、知人から「京都はどう?」と言われて。
遠すぎると思いましたが、物件を探してみると、ここが見つかって、ご縁がつながって。
勢いなんですよ。笑」
ー変わった建物ですが、紹介などではなく、普通に見つかったんですか??
「普通に見つかったんです。
京都で洋館に住みたくて、「京都 洋館」で検索したら出てきました。全然洋館じゃないんですが、実際に見に来て面白いなと思いました。」
ーすごくピッタリです!
「そう言ってくださる方が多いです。笑
棚なんかも、もともと持っていたものが見事にハマりました。
もともとここは駄菓子屋さんで、商売されていた場所。
偶然にも作りが靴を置くのにピッタリで。
京都に来て丸6年。7年目に入ります。
全国からお客様に来ていただけるようになりましたね。
天神さん(北野天満宮)には、本当に助けていただいてて!
縁日の人の流れがあるコース沿いなので、コロナが流行る前は海外の方も多くお客様になってくださいましたね。」
【毎月25日の縁日に。お店から見た風景】
「うちの靴は対面じゃないと売れない靴です。
天神さんがかなり長いこと縁日をされなくて、このあたりが本当にシーンとしていたコロナ禍においても、前からのご注文があったり、「もうダメかも」と思うと、誰かが来て、ぽつりぽつりと注文してくれて。
製作があるのでお店は人が来ても来なくても開けていました。
繋げてくださる方がちょこちょこ来てくださる、という3年間でした。」
【出していただいたお茶とお菓子。お菓子は天神さんゆかりのお店”天神堂”さんのもの。】
「うちにいらっしゃる方は、困っている方がほとんど。
外反母趾だとか、障害をお持ちでらっしゃるとか、その方の”なんとかして!”をキャッチして、木型を補正します。
ご注文の時に採寸しながら、色んな思いをお話になる方もいらっしゃいますし、人生の話になっちゃう方も。
お一人お一人に関わる時間が長いんです。
お渡しした後も、その方の靴との付き合いはずっと続くので、売って終わり、ではなく、こんな風にメンテナンスもお受けします。
人と人との関わりでやっている、そこに私はすごくやりがいを感じますし、楽しいです。
もちろん大変な部分はすごくあって、「なんで靴にしちゃったんだろ?」と思うこともありますけど。笑
ものづくりが好き、という条件でやるなら、他の物でも良かったんじゃない?って。
例えば、バッグや小物は使い勝手や好きか嫌いかだけで選べる。
でも靴って、痛みが伴うんです。
合わない靴は足が痛くなる。
その方の体調や身体の変化で合わなくなってきたり。
本当に難しいし、正直大変。
どうして靴なのかな、と考えると「私のこの性格だから出来ることもあるのかな」と。
尽くすのが好きなんです。笑
足元は、その人の土台なので。
はき心地良く、歩きやすく。
プラスアルファで色を楽しんでもらったり、「好きだな」と思える何かを添えられれば、と思っています。」
メンテナンス作業も少し見せていただいた。
「この方は丸3年履かれていて、ステッチのほつれが気になる、ということでお受けしました。こうやって剥がしていくと、その人の生活が見えてくる。
靴を綺麗にして、またその方の日常にお返しする。私は修理も大好きなんです。
その繰り返しで、その方とのやりとりが10年、20年続く。
それだけの時間、耐久性のある革は、素材としてやっぱりすごいなと思います。
革製品が好き、というわけではなかったので偶然入った道ではありますが、ご縁を感じますね。
副産物としての革、食べさせていただいた後に最後まで利用する、という考え方も私はとても好きで、今のところは革靴のみを手掛けています。」
今回、長谷川さんのご厚意で、オンラインショップの撮影にサンプル用の靴を貸していただいた。
長谷川さんご自身も、モデルとして登場しているので、ぜひご覧いただきたい。
天秤座新月の10月25日公開予定だ。
【出番を待つ靴たち】
【Usaatoの服との化学反応はいかに・・・!】
最後に、今後Usaatoに望むことを聞いてみた。
「基本、ひとも、ものも、全受け入れ派なんです。笑
そのひとにそのままでいてほしい。
今されていることが素晴らしいと思うので、商売繁盛で続いてください!笑」
長谷川さんのお店・工房のHPはこちら
”Usaatoにかかわる、ひと・もの・こと”シリーズ一覧はこちら
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