Usaatoにかかわる、ひと・もの・こと vol. 4逸見吏佳さん | Usaato うさと

Usaato

Number 23

Usaatoにかかわる、ひと・もの・こと vol. 4逸見吏佳さん

 

北海道は美深町

白樺に囲まれるようにして

逸見吏佳(へんみりか)さんの工房

”粗清草堂”(そせいそうどう)がある。

 

円形の畑

手作りの建屋

羊たちが暮らす草原

 

まるでおとぎ話のような風景の中

吏佳さんはご家族・スタッフと

羊毛フェルトの作品作りをしている。

 

めぐる季節の中

羊毛を刈り取り、洗い、身の回りの草木で染め

手仕事を重ねて形になる作品たちは

まるで生きているかのように

それぞれ個性豊かで

のびのびとした空気をまとっている。

 

「自然と調和した暮らしをしながら

素材そのものの、命を生かしたもの作りをしたい」

 

そう考える吏佳さんは

縁に導かれるように

そして縁に応えるように

ひとつひとつ、今の暮らしを作ってきた人だ。

 

 

【ともに暮らす羊たちと】

 

 

「縁あって羊毛専門店で働いていたとき、倉庫が大好きで。

 

格子状の棚に400種ほど羊毛がストックしてあるんですが

その中でもまだ牧草とか付いちゃってて

刈り取られたまま、みたいな感じの

原毛に特に惹かれていました。

 

エネルギーが全然違う。

加工されていないからでしょうか。

すごく力強いんです。

 

人が手を加えることで

そのエネルギーを削ぎたくない。

エネルギーそのままを形にしたい。

 

そう思ったんです。」

 

 

そんな中、

美深にある食用羊の加工所で

捨てられる予定の羊毛を貰い受けた吏佳さん。

 

余っている羊毛がもったいない。

とにかくなんとかしたい。

 

そんな気持ちから

羊毛フェルトで小物を作るWSを続けて5〜6年した頃

彼女の中にある気持ちが芽生えてきた。

 

 

「WSに来てくださる方は、観光の一環でいらしているので

2時間ほどでできる小物を作ってもらってたんですが

だんだん、”もっとがっつりしたものが作りたい”と思うようになってきて。

同じように自分のエネルギーを注ぐなら、

もっと何か出来ないかなって。

 

WSをしている時は、みなさんとても喜んで作業してくださって、作品も嬉しく持ち帰ってくださって、それはそれで素敵なことだったんですが

持ち帰ったその先では、今までと変わらない日常に戻っていくんだなと思ったんです。

ここで羊毛に触れて感じたことを

もっと日常に生かしてほしい。

ならば日常的に使える、お洋服が作りたいと思いました。」

 

洋服作りのWSをしようと

サンプルで作ったウールフェルトの洋服が更なる縁を運び、

その中のひとつにうーさん(Usaatoのデザイナー)との出会いがあった。

 

「うーさんに出会って

”いのちのかたまりのような服を作りたい”

という言葉を聞いたときに

すごく感銘を受けたんです。

 

素材をいのちとして扱うということなんだ、

いのちとして扱わないから

エネルギーが削がれてしまうんだ!と

はっとしました。

 

生まれ持ったものを生かしたい。

 

ありのままの良さを

そのままに作品にしたい。

 

羊毛フェルトは、羊毛に熱と摩擦を加えて圧縮して作ります。

羊毛にはそれぞれ個性があり

フェルト化した時にどれだけ縮むか、読めないところがあるんです。

どこかいびつになっちゃったりもする。

でも、そのゆらぎも含めて魅力だと

伝えられる作品を作っていきたいですね。」

 

 

【工房にてひとつひとつ丁寧に作られる作品】

 

 

さて。

 

吏佳さんのフェルト作品は

意外な形でUsaatoと深く関わっている。

 

洋服にも適した柔らかなフェルトを作るため

彼女は芯地として布を使うのだが、

そこにUsaatoでは欠かせないものが使われているのだ。

 

Usaatoの服は生産地であるタイから運ばれる際に

「ビニールに包みたくない」

という理由から、コットン生地で出来た

大きな袋に包まれてくる。

 

その袋は各地の展示販売会へ

服を送る際にも使用されている。

 

そして、繰り返し大事に使われた後

吏佳さんの工房にて

丁寧に洗われ、場合により草木に染められ

フェルト作品の芯地になる。

 

 

【タイの生産拠点から日本へやってきたUsaatoの服】

 

 

「芯地になる生地を卸してもらえないか、と打診した時に

”Usaatoでは生地の卸しはしていない”と断られたんですが

その後、うーさんが”これじゃだめなの?”と袋を送ってくださって。

 

確かに、開いて使ったら生地そのもの。

 

しかも工房の作業机のサイズにぴったりだったんです!笑」

 

 

今では、

袋の形状を生かしたデザインのアイテムまで

生まれている。

 

 

【工房内に併設されたショップにて】

 

 

今後、Usaatoに望むことや

”こうなったら良いな”という希望があれば

聞かせてください。

そう伝えると、吏佳さんはこう答えた。

 

「私はUsaatoの生産現場に行ったことはないんですが

日本にもそういう仕組みができたら良いなと思います。

 

暮らしの中に染めたり織ったり、

当たり前に手仕事があって

それで生活していける。

 

やっぱり今って

工業化、均一化が当たり前で

それが人にも跳ね返って

それぞれの個性を受け入れられない、みたいな部分が

あると思うから。

 

暮らしの中で手仕事に触れることは

どこか、おおらかに居られる助けになると感じます。」

 

 

今、吏佳さんの工房の作品は

その、もの作りの姿勢からも

ファッション業界の注目を集めている。

 

来年にはカナダで行われるファッションイベントで

ランウェイに登場するという。

 

手作りの暮らしを大事に

素材そのものを生かして作られた作品は、

これからも

街中に暮らす人たちにすら

自然の息吹を届けるだろう。

 

羊から始まる縁は

まだまだ広がりそうだ。

 

 

 

 

『 羊と暮らす 羊とつくる 』

粗精草堂のHPはこちら

https://www.soseisoudou.jp

 

 

12月24日(金)まで USAATO KYOTO にて

租精草堂のウールフェルト作品を展示販売しています。

ぜひお越しくださいませ。

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